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林亮次-7 赤志野茶碗 高台と掻き銘 [志野]

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 林亮次の七つ目の茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 やや小さめの高台は、乱れのある真円で、高さは低く、高台内に兜巾はありません。高台内の彫りも浅いです。釉薬が全体にかかっており、土見せはありません。畳付きも、リューターかサンドペーパーで目跡を削り取ったのだと思われますが、そこのマットな表面が土なのか釉薬なのか良く分かりません。

 高台脇の釉景は、側面全体にも増して緋色が勝った発色なっています。この茶碗で最も重厚感のある景色です。

 掻き銘は「亮」です。釉薬の下になって殆ど潰れかけていますが、辛うじて読み取れます。林亮次の掻き銘としては最も多く見られる掻き銘です。

 という事で、林亮次の七つ目の茶碗でした。赤志野の発色の力強さとシルエットに於ける緊張感のなさが、不思議なコントラストを生んでいる面白い茶碗です。

おわり


P.S. 本年のブログ更新は今回で終了です。新年は7日から更新予定です。皆様、今年もお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。











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林亮次-7 赤志野茶碗 見込み [志野]

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 林亮次の七つ目の茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。

 上から見たこの茶碗は、少し乱れのある真円で、見込みの底には明確に茶溜りが整形されています。写真で見て9時半くらいの位置の口縁が最も薄くなっており、ここを飲み口にするのが快適です。ただ、そうすると、飲む前に茶碗を時計回りに90°回すと言う茶道某流派の所作とは合わなくなります。お決まりの所作を優先するか、快適にお茶を口にする事を優先するかは、各個人の自由だと思いますが、私は茶碗の造形を楽しみたい方なので、特定の所作には縛られずにいたいと思っています。

 見込みの底は、この茶碗で唯一、長石釉の白が緋色に勝っている個所です。ここは、飲み終えた後に残った抹茶の緑色が見える所なので、やはり赤が強い背景よりも、白が勝った景色の方が良いと思います。白と緑の組み合わせは、赤と緑の組み合わせよりも個人的には好きです。

つづく












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林亮次-7 赤志野茶碗 背面と両側面 [志野]

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 林亮次の七つ目の茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。

 どの方向から見ても緋色が勝った釉景です。特に左側面に於いては、白く残った部分が殆どなく、茶色と言える程に濃い赤色になっています。また、その左側面では例のニキビがとても目立ちます。逆に背面と右側面に於いては、白く残った部分が正面と同じくらいあるので、それぞれを正面としても悪くない景色です。私が正面を決めた根拠は、正面向かって左90°に掻き銘や窯印を持って来るという至極一般的な抹茶茶碗の作り方に従っただけで、本当はその辺に拘る必要はないとも思っています。まぁ、正面を何処にするか迷った時の、一つの指標に過ぎません。

 シルエットについては、どの方向から見ても、正面と同じようなイメージです。ふくよかでダルなシルエットで、轆轤目が微かに見えますが、薄く全体にかかった釉薬の下になっていて、明確ではありません。やはり全体的に緊張感のない形です。

つづく












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林亮次-7 赤志野茶碗 正面 [志野]

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 土岐の陶工・林亮次(1940-)の赤志野茶碗です。林亮次の作品を取り上げるのは、これで七つ目になります。写真では、高台脇の掻き銘を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。

 私にとっては不思議と心に刺さる作品が多い林亮次の赤志野茶碗です。全体に薄くかかった長石釉には立体感はなく、赤い緋色が全面に出て、白く残っている部分がむしろ少なくなっています。また、高温で長時間焼いたからだと思うのですが、所々に長石の砂粒が溶けて噴き出て来たニキビのような跡があります。このニキビは「林亮次-1」で紹介した志野茶碗にもあり、また他の作家の志野では見た事がないものなので、林亮次の志野の一つの作風と言えるかも知れません。

 シルエットはずんぐりとしたダルな半筒で、大胆でシャープなイメージになる場合が多い赤志野の釉景と組み合わさって、独特な雰囲気に仕上がっています。緊張感のない形なのに、発色には力強い鮮烈さがあるという、赤志野では余り見られない景色だと思います。

つづく












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河本五郎-1 灰釉茶碗 高台と掻き銘 [陶器その他]

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 河本五郎の灰釉茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 乱れのある真円にラフに削り出された高台は、幅は広めですが直径は小さめで、高さも低いです。高台内もラフに削られ、兜巾はありません。高台脇も比較的ラフに削られていて、全体的にザクザクした土の感じが趣深い土見せになっています。

 こうして見ると、側面も含めて全体的に土の趣と灰釉の趣が見事に融合した美しい茶碗だと感じます。

 掻き銘は「五」だと思われます。縦に入った線が最後に書かれているので、通常の「五」とは筆順が違いますが、草書に於ける「五」ではこういった書き方をする場合もあるようです。

 という事で、河本五郎の灰釉茶碗でした。伝統的なカテゴリーや地域性に囚われない現代陶芸らしい優品だと思います。

おわり












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