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林亮次-4 志野茶碗 見込み [志野]

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 林亮次の四つ目の志野茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。また下の写真では、見込みを光に対して透かして見た状態で写しています。

 上から見たこの茶碗は、少し歪みのある円形で、意外と薄造りです。茶溜は何となくといった感じで成形されています。釉薬の縮れや、灰がかかったのか少々変色している部分、或いは黒く焦げたような箇所や、粗い陶土によって出来た凹凸など、他の一般的な志野とは少々趣の違う景色が印象的です。

 陶土の荒さは、光に透かして見た下の写真からもお分かりいただけるかと思います。見込みの中に幾つも光が漏れている箇所がありますが、これは小石と呼べるくらい大粒の長石が埋まっている所で、長石が半透明なために光が漏れているのです。これほど荒い土で薄造りにすれば、そりゃ光も漏れるし、水も漏れます。(笑) ただし、光が漏れている箇所と水が漏れていた箇所は必ずしも一致しておらず、どうやら水が通り抜ける見えないトンネルが陶土の中にはあったようです。

 地の器自体が強くガラス化する磁器の器ならあるかも知れませんが、土物の陶器の器でこれだけ自然に光が漏れる物を、私は他に見た事がありません。そういう意味で、これは非常に稀有な茶碗だと思います。

つづく












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林亮次-4 志野茶碗 背面と両側面 [志野]

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 林亮次の四つ目の志野茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。

 どの方向から見ても同じような景色ですが、ランダムに現れた釉薬の濃淡や流れ、縮れ、大きな砂粒等によるデコボコによって、非常にダイナミックで動きのある荒々しい景色になっています。一部に轆轤目も残っていますが、それほど規則正しく現れている訳でもないので、むしろ景色の荒々しさを助長しています。こういう景色の茶碗は、他では滅多に見られません。

 特に背面側に多いですが、所々に少し目の細かいザラザラした白い箇所があります。そこは止水剤による白い粉のような物がこびり付いている場所です。止水剤による処理が茶碗の景色に影響している事になりますが、全体の雰囲気に良くマッチしているので、これはこれでなかなか良いと思っています。

 全体のシルエットとしても、不規則で自然な歪みがあって、カチッとしていない不思議な魅力に溢れています。

つづく












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林亮次-4 志野茶碗 正面 [志野]

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 土岐の陶工・林亮次(1940-)の四つ目の志野茶碗です。写真では、高台脇の掻き銘を向かって左90°に持って来て、この向きを正面としています。

 非常に目の粗いザクザクした陶土が印象的な茶碗です。全体的に釉薬は薄くかかっており、縮れがチラホラ、緋色の出方も薄っすらとしていますので、陶土のザクザク感が一層強調されています。陶土のザクザク感は、私の好物とする所です。(笑)

 で、実はこの茶碗、使用開始当初は大変苦労しました。と言いますのも、水漏れが酷かったんです。ジワジワとかポタポタとか、そういう生易しい漏れ方ではなく、もうボタボタボターッ!と見る間に中の水が減って行くのが分かるくらい、底や側面から水漏れしたのです。とても使えた物ではありません。多分、前のオーナーはこれが原因で手放したのでしょう。この強烈な水漏れを止めるのに、私は非常に苦労しました。

 水漏れを止めるために最初に試したのは、片栗粉を溶かしたお湯に茶碗を浸けて浸み込ませ、それから乾燥させるという手法です。この方法を二ヶ月くらいかけて何度か繰り返し、漏れ方を少なくする事にある程度は成功しました。けれども完全には止まりません。しかも水漏れテストで何度か水を入れたりしている内に、再び漏れが酷くなったりします。ですから、この方法は、ジワジワ漏れる程度の水漏れは止められたのでしょうけど、この茶碗の酷い水漏れには適わなかったという事だと思います。

 次に試したのは、市販の食器用止水剤というのを使ってみる事です。使い方は片栗粉のお湯と同じく、止水剤に茶碗を浸けて浸み込ませ、それから乾燥させるという方法なのですが、これは非常に効果がありました。何度か同じ作業を繰り返すと、水漏れは完全に止まりました。その後に何度か水漏れテストをしても、再び漏れ出す事もありません。今ではこの茶碗を普通に使っています。

 この止水剤ですが、成分表示が何処にもないので、物が何だか良く分からないのですが、多分、非常にミネラル濃度の高い硬水のような物なのではないかと思っています。コンビニとかでも売っている「エビアン」等の硬水は、ある程度煮詰めた後に一滴垂らして乾燥させると、後に何かが結晶化したような白い粉が残りますが、それと同じような白い粉のような物が、水漏れ止めに成功したこの茶碗の水漏れ箇所の辺りにこびり付いているのです。しかも、ちょっとやそっとでは取れないくらい、茶碗と一体化しています。普通の飲み水にも含まれるミネラル分の結晶が、陶土の隙間を埋めて、水漏れを止めたという事なら、食器として使うのにも安心です。

 この止水剤の効果に感心した私は、他の茶碗にも日常的に使うようになりました。使った後に乾燥させた茶碗に、この止水剤を入れて浸み込ませ、それから見込み表面を拭いて再び乾燥させるという作業を、全ての茶碗に毎回施しているのです。陶器の陶土には隙間があって、そこに水が浸み込んだままになると、水カビが発生して臭くなる訳ですが、この止水剤で隙間を埋めてしまえば、水が浸み込まず、水カビも発生しないだろうという考えです。この効果を実感できるのは何年も先の話だろうとは思いますし、悪影響もあるかもしれませんが、少なくとも今の所は水漏れする茶碗はなくなりましたし、カビ臭い茶碗は一つも出ていません。

 ・・・おっと、水漏れ止めの話ばかりになってしまいました。茶碗その物の話は、また次回以降で。

つづく


使ったのはコレ



他にも
















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高橋楽斎-1 信楽茶碗 高台と掻き銘 [炻器]

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 四代・高橋楽斎の信楽茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 高台は真円ですが、やや多めに乱れがあります。高台内の彫りも変な形をしていますが、兜巾はちゃんと作られています。

 この茶碗をこうして下から見ても、砂粒混じりのザクザクした土の質感とか、亀裂や穴といったものが、非常に荒々しい景色を作り出しています。また、触った感触も非常に硬質なので、全体として力強さに溢れた使用感となります。ただ、こうした力強さというのは、茶道で良く言われる「侘びた」世界とは少々趣を異にするものかも知れないので、使う人の好き嫌いが分かれそうではあります。

 掻き銘は「ら」です。楽斎の作品では、この「ら」の他に、角印の「楽斎」と丸印の「楽斎」とかあったりします。実は、どれが三代・楽斎で、どれが四代・楽斎なのか、はたまた五代(当代)の楽斎がどうしてるのか、或いは個人作と工房作品でどう区別しているのか、そういった部分が私は良く分かっていません。今回の茶碗に関しては、共箱に書かれた「楽斎」の書体と押された印の形、それと売り手の説明によって四代・楽斎と判断していますが、どこかに間違いがある可能性があります。代を重ねた窯元の作品では、それがいったい何代目の作品なのかを調べるのも面白かったりするのですが、時々良く分からない事もあります。(^^ゞ

 という事で、四代・高橋楽斎の信楽茶碗でした。炻器らしい硬くて荒々しい味わいが美しい茶碗です。

おわり












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