高橋楽斎-1 信楽茶碗 見込み [炻器]
四代・高橋楽斎の信楽茶碗の見込みです。写真では、茶碗正面を下にしています。
上から見た形は乱れの少ない真円で、口縁もほぼ均一です。ですから、何処に口を付けて抹茶を飲んでも、口当たりや飲みやすさは同じです。飲み口を気にする必要はありません。
見込みの底には小さめに茶溜があって、それの縁が微妙に盛り上がっています。また、外側と同様に見込みの中にも自然釉はかかっておらず、陶土の砂粒などでザラザラしています。こういう作りだと、茶筅を傷めやすいので嫌う方もいらっしゃるようですが、私個人としては、こういう荒々しく整わないテクスチャーは大好きです。
もっと良く観察すると、陶土に含まれる長石の砂粒が溶けて噴出している箇所や、小さな亀裂や穴なんかもあり、こういうのを野趣溢れる景色と言うのでしょうか、人智を超えた土と炎が織り成す素晴らしい景色があります。この辺が信楽の良さだと思います。
つづく
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高橋楽斎-1 信楽茶碗 背面と両側面 [炻器]
四代・高橋楽斎の信楽茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。
背面では、黒い所と明るい茶色の所の左右が入れ替わるだけで、基本的には正面と同じような景色です。左側面では、多分灰がかかった為だと思われますが、斑に黒い模様が出ています。逆の右側面は、殆ど素焼きのような明るい土の色となっています。こういう場所によって焼き上がりが異なる茶碗というのは、眺めていて非常に面白いですよね。
それと興味深いのは、艶の出方も場所によって異なる事です。正面や背面にある程好く焼けた茶色の部分と、左側面にある黒い部分では、抑え気味ではありますが確かに艶があって、光を反射しています。それに対して、明るい茶色になっている右側面には艶がありません。艶のある部分は、高温で焼かれたために表面のガラス化が進んだのだろうと思います。逆に、艶のない部分は焼成温度が比較的低かったのでガラス化が進まず、艶のない仕上がりになったのでしょう。ですから、この茶碗は焼成時に左側面が熱源(薪による炎)に向いていて、それで高温で焼かれると共に灰もかかり、反対の右側面は影になって、温度もそこまで上がらなかったのだと思います。焼成時に茶碗が置かれた状況が想像出来る、面白い姿です。
つづく
高橋楽斎-1 信楽茶碗 正面 [炻器]
今回の茶碗は、四代・高橋楽斎(1925-)の信楽茶碗です。写真では、高台内に偏って刻まれた掻き銘を向かって左90°の位置に持って来て、この向きを正面としています。
自然釉と言えるほどの灰はかかっていないので、そういった部分での景色は楽しめませんが、向かって左に灰がかかった事によると思われる黒い部分と、向かって右の素焼きのような明るい色調の部分の両方を、この正面から見る事が出来、また真ん中の程好く焼けた茶色の部分も美しく、その意味でもここを正面とするのが良いのではないかと思います。
全体的には角張ったカチッとした造形ですが、乱れのある轆轤目とか、陶土に多く含まれる長石の砂粒によるザラザラ感とかが、自然な不規則性や偶然性を表していて、味わい深いテクスチャーになっていると思います。口縁部直下に入れられた2本の細い線も、ちょっとモダンでイイ感じです。
四代・楽斎の作品は、滋賀県指定無形文化財保持者であった父=三代・楽斎(1898-1975)や、同じく滋賀県指定無形文化財保持者となった弟の春斎(1927-2011)、或いは当代である五代・楽斎(1954-)の作品と比べると、比較的買いやすい価格で中古品を入手する事が出来るのですが、私の審美眼が足りないからなのか、出来栄えに大きな差はないように思われ、信楽の抹茶茶碗をコレクションに加える上で、とてもありがたい存在です。
つづく
兼田佳炎-2 萩茶碗 高台と窯印 [萩]
兼田佳炎の二つ目の萩茶碗の高台と窯印です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。
高台はほぼ真円で、高台内の掘りは浅めにされ、兜巾も控え目です。土見せはちょっとだけですが、砂粒混じりのザクザクした感じが、土物の味わいを醸し出しています。
高台周辺の釉調も他の部分の釉調と同じような感じで、泡の跡と気泡の穴が印象的なのですが、特にここで見られる釉景では釉薬の厚みの変化や流れがあって、この茶碗の中でも最も動きのある釉景となっています。
窯印は「佳炎」です。この写真では分かり難いですが、現物を見ると割りとクッキリと文字が出ています。
という事で、兼田佳炎の二つ目の萩茶碗でした。泡立った釉薬が独特の景色を作り出している興味深い茶碗です。
おわり