作者不明 志野 見込みと飲み口 [志野]
作者不明の志野茶碗の見込みです。茶碗正面を真下ぐらいにして写しています。
ツルンとした釉調に真円で緊張感のある茶溜りとなっていますが、適度に入った斑と気泡が見込みに変化と緩さを加えています。多くの磁器で見られるようなカチッとした見込みよりも、こうゆう少し緩い見込みの方が、リラックス出来て良いと思います。
上の写真では分かり難いですが、写真向かって右の3時から4時辺りの位置に飲み口が作られています。他の部分と違って、ここだけ口縁が少し削られて薄くなっています。高さも少し凹んでいます。下の写真はその拡大なのですが、お分かりになりますか?
ですからこの茶碗では、正面向かって左に窯印、右に飲み口が配されており、飲む際には正面から90°左に回すという茶道の特定流派の所作に合わせた造りになっている事が分かります。ただ、その回し方は流派によって異なり、全く回さずに正面から飲む流派もあるそうですし、薄茶席と濃茶席で回し方が違ってくるという話もありますので、特定流派の特定所作にだけ合わせるこうした作り方が本当に適切なのかどうかは判断しかねます。尤も、この茶碗が生真面目に作ってある事は理解出来ます。
濃茶席で思い出しましたが、茶道の特定の流派では、濃茶席が最も畏まった茶会席で、そこでは一杯の濃茶を何人かで回し飲みするそうです。えぇ~、それは嫌だなあ。親しい間柄でも回し飲みには抵抗があるのに、面識がある程度の人とか初めて会う人とかと回し飲み≒間接キスしなければいけないなんて・・・。何処かのカルト教団の儀式じゃないんだから、そういうのを強制されたら、私だったら席を外して帰っちゃいそうです。
ま、私のように一人で抹茶を楽しむ分には関係ない事ですが、一般庶民の感覚とは違うこういう茶道の部分が、抹茶の楽しみを庶民から遠ざけている一つの要因なのではないかと思ってしまいます。
つづく
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