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中島正雄-2 志野 背面と両側面 [志野]

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 中島正雄の二つ目の志野茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面側(掻き銘側)で、二枚目が正面向かって左側面、三枚目が右側面です。

 正面からも見える強い模様の部分以外は、全体的にペタッとした長石釉による白い景色が広がっています。ただ、背面側を良く見ると、長石釉の下に小さく鬼板による何らかの絵が描かれているのが分かります。また、施釉時の指跡と思われる部分に緋色が出ていますし、少ないですが気泡も赤く出ています。これらによって、辛うじて退屈になり過ぎない景色になっていると思います。まぁ、実用を考えると、自己主張の強さはこれくらい抑えられていた方が使いやすいかも知れません。

 側面全体になだらかな凹凸があって、それらは主に横方向に走っているので、殆どが轆轤目だと思います。ただ、それにしては大きくなだらかなので、或いは手捻りによる指跡の可能性もあります。このなだらかな凹凸によって、堂々とした体躯の割りには穏やかな表情の茶碗となっています。

つづく












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中島正雄-2 志野 正面 [志野]

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 岐阜県土岐市・雅山窯の中島正雄(1921-2014)の志野茶碗です。中島正雄の志野茶碗を取り上げるのは、これが二つ目です。写真では、大きく鉄絵が描かれている側を正面としています。この向きで掻き銘はほぼ背面側に来ます。

 「高麗青磁」で土岐市無形文化財保持者となった中島正雄の志野作品は随分と買いやすい価格で中古市場に出回りますが、技術的には確かなので、価格の割りに良い作品が手に入れられると思います。この茶碗もそうでした。

 正面には三つの山塊が描かれているのですが、一番左の山以外は完全に長石釉の下に隠れてしまって、パッと見では殆ど見えません。一番左の山は、長石釉の気泡の穴から鬼板の鉄分が流れ出し、強いアクセントのある模様になっています。本当は山の絵をもっと見せたかったのだろうと思いますが、作者の思い通りにはならない所が志野の面白さで、また、そういう事を受け入れて作品をボツにしない作者の大らかさが素晴らしいと思います。

 志野の茶碗らしく堂々とした姿で、高さを抑え、やや横に伸びたシルエットです。長石釉は良く溶けて気泡も少なく、立体感のある釉景という訳ではありませんから、その辺は少し物足りないと感じます。前に取り上げた一つ目の志野茶碗も同じような釉調でしたから、これがこの作者の志野の特徴と言えるかも知れません。

つづく












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加藤健-2 黄瀬戸 高台と掻き銘 [陶器その他]

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 加藤健の黄瀬戸茶碗の高台と掻き銘です。高台の写真では、茶碗正面を上にしています。

 この高台も黄瀬戸で良く見られる典型的なスタイルです。茶碗の直径に対して高台の直径が大きく、高さは抑えられていて、厚みもやや薄手です。高台内はフラットで、目跡が高台内にあります。

 こういう目跡が高台内にあるという事は、リング状の台を高台内に差し込む事によって、畳付を浮かせた状態で焼成しているという事です。これで畳付にも塗られた釉薬が滑らかに焼き上がり、結果として、茶碗使用時に置く場所の表面を畳付によって傷付ける可能性が低くなります。一般的な陶器の茶碗では、焼成室に直に、若しくは畳付と床の間にスペーザーを噛ませた状態で茶碗を置いて焼くので、畳付に目跡が出来、それが鋭利な凹凸として焼成後に残ってしまいます。物によっては、この畳付に残る鋭利な目跡をリューター等で削って滑らかにしてから出荷する場合もあるようですし、ユーザーによっては自分でサンドペーパー等を使って目跡を滑らかにしてから使う人もいたりするようですが、この黄瀬戸のような焼き方をすれば、それらが必要なくなります。とは言え、この黄瀬戸の場合でも高台内の目跡はある程度削ってあるようですし、畳付の目跡を気にしないユーザーも多いですから、目跡に係る手間としては殆ど変わりません。まあ、「滑らかに釉薬が掛かった畳付」という単なる見た目上の特徴程度に考えておいても良いと思います。

 掻き銘は、加藤健の何時もの「健」です。高台の直径が大きく、高台脇が狭いので、やや小さめの掻き銘になっています。

 という事で、加藤健の黄瀬戸茶碗でした。殆ど教科書通りという感じの典型的な黄瀬戸茶碗ですが、それだけに黄瀬戸特有の味わいが存分に楽しめる基本の一碗だと思います。

おわり












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加藤健-2 黄瀬戸 見込みと抜けタンパン [陶器その他]

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 加藤健の黄瀬戸茶碗の見込みと抜けタンパンの様子を写しています。見込み全体の写真では、茶碗正面を下に、抜けタンパンの写真では正面を上にしています。

 見込み全体の質感は、外側と同じく砂粒のブツブツと釉薬の細かいムラによる油揚肌になっています。乱れのない真円の口縁は薄く均一で、底面もフラットに見えます。ただ、見る角度を変えると底面に浅い茶溜が何となく成形されているのが見えたりします。

 二枚目の写真で写した抜けタンパンは、黄瀬戸の大きな見所の一つです。この写真では正面の内側を写しているのですが、タンパンの抜けている位置が正面のタンパンの位置と見事に一致しているのが分かります。それにしても、この抜けタンパンというのは不思議な現象ですよね。表に塗られたタンパンが、焼成によって裏側まで抜けて浸透するという現象は、組織の密度が低い陶器だからこそだと思います。タンパンが抜けていなかったり、わざわざ裏に着色して抜けタンパン風に見せている黄瀬戸もあったりするのですが、そういうのは甚だ興醒めと言わざるを得ないでしょう。

つづく












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加藤健-2 黄瀬戸 背面と両側面 [陶器その他]

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 加藤健の黄瀬戸茶碗を各方向から写しています。上の写真が背面で、二枚目が正面向かって左側面(掻き銘側)、三枚目が右側面です。

 背面の彫りは正面よりも小さくされており、正面と明確な差がつけられています。分かりやすいですね。そういう彫りの見え方が違うという以外、シルエットや釉調、表面の質感とかは、正面の景色と同じです。

 陶土には細かい砂粒が含まれていて、薄い釉薬を通して砂粒によるブツブツを見る事が出来ます。また、胴には横に細かい筋が幾つも走っていて、それも茶碗表面の心地良いザラザラ感を演出しています。この筋は箆等による削り跡と思われますが、それが茶碗の胴全体に見られるという事は、最終的な全体の成形が削り加工によって行われている事を示しています。ですから、胴中央を走る胴紐も、後から接着されたものではなく、削り出しによって成形されたものだと予想されます。「胴紐」とは、「紐」と言うだけあって、紐状の粘土を後から付けたものだと勝手に思い込んでいましたが、少なくともこの茶碗に於いては違っているようです。

 いやぁ、それにしても、この油揚肌。イイですねぇ。この茶碗の場合、黄瀬戸に於いては「焦げ」とも呼ばれる酸化鉄の滲みによる茶色の発色はないのですが、釉薬の細かいムラによる自然なテクスチャーが良い味を出しています。

つづく












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