加藤健-5 志野 正面 [志野]
美濃の陶芸作家・加藤健(1947-)の志野茶碗です。草文が描かれているので絵志野という事になろうかと思いますが、箱書きには「志野」としか書かれていません。加藤健の茶碗を取り上げるのは、これで五つ目になります。写真では、高台脇の搔き銘を向かって左90°の位置に持って来ていますが、この向きで草文がちょうど正面に来ています。これは所謂お決まりの配置です。
茶色の鉄絵で草文が描かれた上から厚い長石釉がかかっています。かかっている釉薬自体にはそれ程の凹凸はありませんが、多くの細かい気泡が開いていて、ゴツゴツした半筒の形状や草文と相まって、かなり動きのある景色になっています。
私は人為的な絵が描かれている器は余り好きではないのですが、これくらい不規則な感じのラフな絵なら悪くないと思っています。人の手に依らない自然な不規則性と人為的な規則性とが境界なく混ざり合う所に私の好きな美しさがあると感じているので、器に描かれた絵が所謂上手なものになればなる程、私としては興醒めするのです。その点この茶碗は、やや人為的寄りではありますが、良いバランスになっていると思います。
つづく
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