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林亮次-5 絵志野茶碗 正面 [志野]

林亮次05_01
 土岐の陶工・林亮次(1940-)の絵志野茶碗です。林亮次の作品を取り上げるのは、これで五つ目になります。写真では、絵の描かれている箇所を正面としています。この向きで、高台脇の搔き銘は向かって右90°の位置に来ます。

 私は、人の作為がもろに現れる絵の類が描かれている茶碗というのが、基本的に余り好きではありません。特に、自然で不規則な釉景の中に美しさがあると感じている志野焼に於いては、露骨に絵を見せにかかっている作品に関心が湧きません。ところが、今回の絵志野茶碗には何故か心が動きました。多分、描かれた草文が流れる釉薬の下に消えかかっている様子が、人の作為の儚さ、或いは自然の力の偉大さを感じさせるからではないかと思っています。別の見方をするなら、人工的な絵と自然に不規則な釉景が適度に混ざり合っている様子に美しさを感じているとも言えます。

 茶碗のシルエットは、基本的に半筒ですが、口縁に向かって少し窄まり、且つ微妙に端反りになっています。胴は少し箆で縦に削ってあるようで、ちょっとゴツゴツした造形です。

 で、やはり草文を覆い隠しつつある釉薬の景色が美しいです。緋色も軽やかな橙色で、釉薬の白色に対して良く映えます。釉薬の白、緋色、釉薬に空いた気泡、ゴツゴツした造形・・・。そういった自然で不規則な要素が、人工の絵の上に重なり、混ざり合い、全体として癒しをも感じさせる非常に美しい景色を形作っています。

つづく












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