田原陶兵衛ー1 萩茶碗 正面 [萩]
山口県長門市深川湯本にある田原陶兵衛工房の十二代・田原陶兵衛(1925-1991)の萩焼です。写真では、窯印を向かって左90°に置き、この向きを正面としています。
田原陶兵衛工房は、萩焼の創始者の一人・李勺光の子の付人であった蔵崎五郎左衛門と共に萩から深川に移って最初に深川萩を始めた赤川助左衛門(初代)の直系に当たる窯元です。言ってみれば深川萩の始祖の窯元で、「深川本窯」と呼ばれる事もあります。当代は十三代・田原陶兵衛(1951-)で、今回の茶碗の作者=十二代・田原陶兵衛は十三代の父、十代(1880-1939)の次男、十一代(?-1956)の弟となります。
この茶碗はネットオークションで落札したのですが、共箱なしの共布付きだったので、比較的安く入手出来ました。ネットオークション市場での田原陶兵衛工房の作品は、十二代と十三代の作品を中心として比較的多く出品されていて、幾つかの条件で妥協すればリーズナブルに買えますし、妥協しなくても法外な金額が必要になる事はありません。歴史的に見ても、経済的に見ても、深川萩の入口として取っ付きやすい窯元だと思います。
さて、この茶碗ですが、寒色系の地に乳白色の釉薬が大胆に流れ、それが親しみやすい碗形の造形と相まって、微妙に可愛さのある美しい茶碗に仕上がっています。胴には薄く轆轤目が残り、器のシルエットを構成するラインとしては少し硬さが出ています。尚且つ造形に乱れがないので、例えば、ほぼ同世代で同じく深川萩の十三代・新庄寒山の作品と比べると、ちょっと重厚感があります。器の肉厚も、分厚いとまでは行きませんが、シャープと言えるほど薄くはありません。
こういう微かに硬さと重厚感のある造形は、田原陶兵衛工房の作品全体に共通しているように何となく私は感じます。
つづく
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