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水野鉐一-1 引出黒 正面 [陶器その他]

水野鉐一01_01
 愛知県瀬戸市の作家・水野鉐一(1936-)の引出黒茶碗です。写真では、向かって左90°の位置に掻き銘を持って来て、この向きを正面としています。

 瀬戸の作家さんの引出黒という事で、気持ちとしては「瀬戸黒」と呼びたくなるのですが、現代では瀬戸黒は美濃の焼物の一つとされていて、瀬戸が発祥である訳ではないというのが定説なので、これは「引出黒」と呼ばれているのだと思います。この状況は黄瀬戸も同じなのですが、昔は瀬戸黒は瀬戸が発祥だと考えられていたので「瀬戸」という言葉が名前に入っています。ところが、近代の発掘調査等で、元々は美濃が発祥だという事が判明し、今では「瀬戸黒」は美濃焼の一つとされるようになりました。でも呼び方は以前のまま残り、瀬戸ではないのに「瀬戸黒」と呼ばれ続けています。逆に今瀬戸で焼かれる物は「瀬戸黒」ではなく、地名の要素のない「引出黒」と呼ばれる場合があるようです。
 ちょっとややこしい状況です。(笑)

 で、この茶碗ですが、私が瀬戸黒に抱くイメージにかなり近い姿をしています。
 釉薬には艶があり、梅花皮がムラムラと強く出ています。余りに強く縮れているので、梅花皮の隙間の溝からは地の陶土が見えています。釉薬が溶けている最中に引き出して急冷したという引出黒の製法らしい、如何にもな景色だと思います。

 筒型に近いフォルムですが、口縁はやや端反り気味で、腰の辺りも少し張っています。これでもう少し横型の形になれば、志野焼とかで良く見られる腰の張った半筒型の形になります。また、この造形には乱れが結構あって、その自然な不規則性が、釉薬の縮れ具合と相まって、非常に美しい景色を作っています。

つづく












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