美和隆治-1 志野茶碗 正面 [志野]
土岐の陶芸家・美和隆治(1930-)の志野茶碗です。写真では、緋色が最も出ている部分を正面としています。ここを正面とすると、高台脇の掻き銘は向かって右90°の位置に来ます。
オレンジ色の淡い緋色が優しい雰囲気を作り出している茶碗です。ただ、美和隆治の志野茶碗をネット上で検索すると、茶碗の何処かに鬼板による黒などの強い色を入れている場合が多く、こういった全体的に優しい色調に仕上げている作品は多くはないようです。
茶碗の形は、腰の辺りが少し膨らんでポッチャリした半筒のシルエットです。胴に横方向の線彫りがあったりするのですが、釉薬が分厚くかかり、且つその釉薬がなだらかに全体を覆っているので、優しくふくよかな景色になっています。厚みもあるので、余計にふくよかなイメージです。
公益社団法人美濃陶芸協会のHPを見ると、美和隆治は功労会員で、「主な技法」は黒織部となっています。ところが中古市場を見ていると、氏の黒織部で抹茶茶碗というのは多くは出て来ません。むしろ志野茶碗の方が多いように見受けられます。これは実際に製作した数で言えば志野の方が多かったからなのか、それとも黒織部に傑作が多いので手放す人が少ないからなのか、その辺は良く分かりません。・・・尤も、上記協会の「主な技法」欄では、あの安藤日出武が黄瀬戸となっていたりするので、この欄を余り気にする必要はないのかも知れません。私の中では、安藤日出武に黄瀬戸のイメージは全くありませんし、物も中古市場で一回見た事があるかどうかぐらいです。業界内から見える景色と、ユーザー側から見える景色とでは、随分と違っているのでしょう。
つづく
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