安藤日出武-1 志野 正面 [志野]
岐阜県多治見市の仙太郎窯で作陶している安藤日出武(1938-)の志野茶碗です。この茶碗で鉄絵は一箇所にしかないので、写真の向きが正面で良いと思います。ただし、ここを正面とすると、掻き銘は向かって右奥の四時位置くらいに来て、口辺の最も飲みやすい造形がなされた飲み口と思われる箇所も、右奥の掻き銘の上くらいに来ますので、この茶碗は茶道の特定流派の所作について殆ど考慮されていない事が分かります。
所謂「作家物」の茶碗を私が買おうと思った最初の切っ掛けは、実はネットオークションで安藤日出武の志野茶碗を初めて見て感銘を受けたからでした。何だか凄く心に引っ掛かる見た目で、しかも落札価格もそれほど高くないようです。これなら欲しいし買えると思いつつ勇んで入札したのですが、思った以上に入札価格が上昇し、結局落札出来ませんでした。その後も安藤日出武の別の茶碗に何度かトライしたのですが、なかなか落札に至らず、結局は別の作家(林亮次)の茶碗を落札出来たのが、最初の作家物の購入となったのです。ですから私は、初めて落札できた林亮次の茶碗と同様に、安藤日出武の茶碗に特別の思い入れがあります。今回ご紹介する安藤日出武のこの茶碗は、その後幾つかの作家物茶碗を購入した後に、やっと購入出来た安藤日出武の私にとっての第一号です。
この茶碗のフォルムは基本的に半筒型ですが、ちょっと台形で、腰が少し張っています。で、この縦横比が絶妙で、安定感がありつつも、適度に引き締まった纏まりを見せています。安藤日出武の茶碗では、これ位の縦横比になっている作品が多いように思います。
この茶碗の形状でもう一つ特徴的なのは、写真では分かり難いですが、鉄絵のすぐ右横の胴に、緩やかな凹みがある事です。写真向かって右奥にある飲み口から飲む場合、この凹みが丁度左手親指の所に来て、指の収まりが大変良いです。
正面の鉄絵は、何だか良く分からない模様です。何を描いたか分かる「絵」よりも、作為のないこういう模様の方が私は好きです。
表面の釉薬は、適度に艶が抑えられ、且つ気泡は比較的少ない方でしょうか。施釉の際の指跡とか、釉薬の自然な流れによって出来た緩やかな凹凸、分厚い釉薬の上からでも何となく分かる荒い轆轤目・・・。作者の意図と無意識、そして適度な乱れのある自然の力による造形が、心地よく混ざり合った良い景色です。
つづく
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